18歳の女性が左目の充血と痛みを訴えて来院されました。
診察すると左の白目(結膜)は赤く充血していて、黒目(角膜)に白い混濁がありました。この角膜の白い混濁は感染によるものです(診断:角膜感染症)。
患者さんは2週間で交換するソフトコンタクトレンズを使用していました。そのレンズと消毒液が入ったレンズケース、現在使用しているソフトコンタクトレンズ用消毒液(1剤で洗浄、すすぎ、消毒、保存ができるマルチパーパスソリューション)のボトルを下関市医師会臨床検査センターに送り、検査をお願いしました。
1週間後に戻ってきた結果をみてびっくりしました。レンズケースの中の消毒液、ボトル中の消毒液のいずれからも緑膿菌という細菌が検出されました。緑膿菌は重篤な角膜感染症を引き起こす細菌の代表例で、早期に適切な治療を行わないと失明してしまうこともあります。この患者さんは当初から緑膿菌に効果的な抗生剤の点眼薬を処方したので、幸いにも後遺症もなく完治しました。
緑膿菌は私達の身の回りにいる細菌です。とくに水気の多いところにいます。2週間で交換するソフトコンタクトレンズはケアを必要としますが、そのケアが不適正だと、外からレンズあるいはレンズケースに入り込んで、増殖してしまうのです。角膜の表面に傷などがあると、そこから緑膿菌が入り込み、角膜感染症を引き起こします。
ソフトコンタクトレンズ消毒液は細菌を殺すあるいは細菌の数を減らすことを目的としていますが、この患者さんの場合にはレンズケースの中の消毒液だけでなく、現在使用しているボトルの中の消毒液まで緑膿菌に汚染していました。
多くの方がマルチパーパスソリューションを使用していると思いますが、このタイプの消毒液は消毒効果が弱いので注意が必要です。ボトルの中の消毒液が細菌に汚染されないよう注意して取り扱いましょう。マルチパーパスソリューションを使用する場合のレンズケアのポイントを以下に記します。
1.眼科医の指導や添付文書に記載された内容を確認する
2.使用したコンタクトレンズは毎日ケアする
3.コンタクトレンズを触る前に手をきれいに洗う
4.コンタクトレンズをしっかりこすり洗いをする。十分にすすぐ
5.マルチパーパスソリューションの再使用はしない(レンズケースに残った薬剤は捨てて、
新しい薬剤を入れる)
6.マルチパーパスソリューションのボトルの先端は他の物に触れないように清潔にする
7.マルチパーパスソリューションのボトルは使用しない時はしっかり閉める
8.コンタクトレンズを保存中はレンズケースのふたを閉める
9.レンズケースは水場の周りに置かない
10.レンズケースからコンタクトレンズを取り出した後はレンズケースをしっかり水道水
またはソフトコンタクトレンズ消毒液で洗浄して自然乾燥する
11.マルチパーパスソリューションのボトルは開封後1~2ヶ月を目安に使用する